前のめりSE投資家の勉強ノート

将来の資産形成を目的として、株式や債券など様々な金融商品への投資をやっています。充分な利益を目指し、日々勉強しています。

【企業分析】フィスコ(3807)

1.はじめに

前回の記事*1の続きで、今回はフィスコの企業分析をします。

2.事業内容

フィスコは情報サービス事業、広告代理業、暗号資産・ブロックチェーン事業を展開しています。ラジオ日経や株式関連ニュースの記事などで、よくフィスコの企業名を見かけることと思います。

3.業績分析

まずは通期の連結業績から確認します。単位は百万円で、2021年12月期は会社の業績予想です。

フィスコ 2019年12月期 2020年12月期 2021年12月期
売上高 5,789 1,119 1,094
-48.20% -80.60% -2.20%
営業利益 -586 61 91
経常利益 -984 -127 285
当期純利益 -666 66 873

2020年12月期は大幅に減収しています。これはネクスグループの売上高が計上されなくなったためです。2020年度12月期本決算の決算短信に以下の記載があります。

連結会計年度より、株式会社ネクスグループ(以下「ネクスグループ」といいます。)が連結子会社から持分法適用関連会社へ変更したことに伴い、総売上高が前年同期と比して大幅に減少しております。なお、第3四半期連結会計期間期首より、ネクスグループは持分法適用関連会社から除外されています。

2019年12月期時点でネクスGは連結子会社から持分法適用関連会社に変更されています。現在の売上高は2018年12月期の売上高と比べると10分の1まで減少し、大幅な事業規模縮小となっています。

2021年12月期の通期業績予想は1Q決算で上方修正され、当期純利益は約8億円の大幅な黒字転換となっています。しかし、これは同時に開示された特別利益のIRニュース*2から実際に資金の入ってくる利益ではないことがわかります。ニュースに記載されている持分変動損益*3は会計上の損益で、CAICAがZaif HDの連結子会社になったことにより、財務諸表の辻褄を合わせるだけのことです。この持分変動利益(特別利益)が約6億円計上されており、業績予想が大幅に増益になったように見えているだけです。来期はこの利益が計上されなくなるので、当期純利益の観点で減益になることはほぼ間違いないと思います。

次に5/14(金)に発表された1Q決算の各セグメントの売上高と営業利益を確認しましょう。単位は千円です。

報告セグメント 売上高 営業利益
情報サービス事業 223,957 58,550
広告代理業 18,546 3,444
暗号資産・ブロックチェーン事業 652 525
その他 500 412
調整額 - -72,587
営業利益 0 -9,654

調整額(各セグメントに帰属していない全社費用)に対して売上が不足しているので、いまだ営業利益は赤字のままです。ただし、この調整額の赤字幅は前年同期比で縮小しており、今期1Qの営業利益の赤字幅は縮小しています。とはいえ、一般管理費の縮小には限界があるので、黒字化達成のためには早急に各セグメントの売上高と営業利益を増やす必要があります。

損益計算書を確認したところ、気になる記載がありました。経常利益に営業外収益として、暗号資産売却益が8000万円ほど計上されている事です。資産の売却なので、この利益もいずれ無くなるはずです。もしも、これがいろいろ発行されている○○コインの事で、任意のタイミングで任意の数量発行できるのだとしたら、会社側にとって増資や借入よりも都合のいい資金調達方法でしょう。内訳は分からないので、これ以上の詮索はしないでおきます。

4.財務分析

まずは、貸借対照表の推移を確認しましょう。

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再編により事業規模がどれだけ縮小したかが一目で分かります。規模が縮小しすぎて内訳が分かりにくいので、各項目を割合で確認しましょう。単位は千円です。

資産項目 金額 割合
現金及び預金 235,211 10.1(%)
その他流動資産 278,610 11.9(%)
有形固定資産 58,575 2.5(%)
無形固定資産 94,512 4.0(%)
投資有価証券 1,546,395 66.1(%)
その他の資産 126,461 5.4(%)
負債または純資産項目 金額 割合
流動負債 255,659 9.4(%)
固定負債 334,394 12.2(%)
株主資本 2,115,185 77.5(%)
新株予約権 25,522 0.9(%)
その他資本 -135,336 -

現在の財務状況は、自己資本比率が84.6(%)まで向上し、流動比率も約2倍となり、大幅に改善しました。しかし、これは単なる再編だけで実現したものではなく、ネクスグループがDESによりフィスコの負債を帳消しにし、CAICAがDESによりフィスコ保有していたZaif HDの負債を帳消しにした結果です。フィスコネクスグループ、CAICAから資金が蒸発して株式に置き換わったというだけのことで、あまり嬉しい話ではありません。(前者はフィスコのIR*4で開示、後者はフィスコ有価証券報告書で開示)

他に気になる点もあります。資産における投資有価証券の比率が非常に高い事です。前記事の通り、フィスコネクスグループの株式を保有していますが、そのネクスグループの株価も数年前から順調に下落しています。他の有価証券含め、妥当な簿価なのかどうか気になるところです。Zaif HDに関しては、有価証券報告書で「持分法適用に伴う負債」として計上されていることが明示されています。もしかしたら、他も同様にどこかで更新されているのかもしれませんが、それにしても持ち合い株が多い点を考慮すると安心は出来ないと思います。さらに価値が下落した場合、どこかのタイミングで減損することになると思います。

5.まとめ

キャッシュの入る安定した黒字化はまだ遠いと言った印象です。財務面は改善しましたが、資産面は投資有価証券が多く不安が残ります。現時点でもPBRは4.34倍ですが、現実はもっと割高の可能性も十分にあります。利益が出ていないのに配当も出し続けているので、このままだと資産は目減りする一方です。

しかし、関連3社や投資家が増資を引き受けている間は、仮に資金が底を付きかけても何とか企業を維持できるのではないかと思います。もっとも、増資すればするほど株価は下落する一方となることでしょう。投資観点で言えば、他の企業の株を保有した方が良いかと思います。

6.おわりに

正直な話、決算短信有価証券報告書、開示されている全てのIRを読み込めば、さらに多くの懸念点が見つかるような気がしています。しかし、フィスコの分析はここで終わりにします。まとめにも書きましたが、分析を始める前から現在まで一貫して、「投資するなら他の銘柄の方が良い」という考えは変わりません。ブロックチェーン事業をやれば儲かるというものではないので、投資するのならよくよく考えましょう。

なお、本記事は本銘柄の売買を推奨するものではありません。売買を止める意図もありません。最終的な投資決定はご自身の判断でなさるようにお願いします。