前のめりSE投資家の勉強ノート

将来の資産形成を目的として、株式や債券など様々な金融商品への投資をやっています。充分な利益を目指し、日々勉強しています。

【企業分析】CAICA(2315) [2021年10月期1Q]

1.はじめに

今回は前記事*1でも分析したCAICAの1Q決算が公開されたので、内容を分析してみようと思います。

「業績は難しいからパス」というあなたに結論を先に書いておきます。保有しているのなら早めに利益確定or損切して、保有してなければ近寄らないべきというのが私の考えです。ただし、これを見て行動した結果については責任持ちません。なぜそう思うのかについて気になるなら、記事の続きを読んでください。

2.事業全体の業績に関する分析

決算のニュース*2としては、「赤字縮小」として公開されています。では、具体的な数値を確認しましょう。単位は(百万円)です。なお、CAICAの1Q(第1四半期)の期間は11~1月となっています。

単体決算 売上高 営業利益 経常利益 純利益
2020/1Q 1667 -179 -281 -279
2020/4Q 1583 -75 -223 -255
2021/1Q 1270 -129 -179 -176

営業利益の赤字は確かに前年同期比で50(百万円)減少しており、純利益の赤字も103(百万円)減少しています。一方で、売上高は前年同期比で397(百万円)減少しており、良い話ばかりではなさそうです。この主な理由は以下であると推測できます。

  • 赤字事業だったHRテクノロジー事業から撤退した。(40百万円の営業損益縮小)
  • 持分法による投資損失が縮小した。(29百万円の経常損益縮小)

また、HRテクノロジー事業から撤退した後の2020/4Q単体決算と比べてみると、売上高は313(百万円)減少しています。そして、営業利益の赤字も54(百万円)拡大しています。情報通信業は季節が業績に与える影響の小さい業種だと思うので、事業の状態が上向きになったとは言いにくい状況です。それでは各事業の業績を見てみましょう。

3.各事業の業績に関する分析

売上高と営業損益の推移

事業全体と同様に具体的な数値を見てみましょう。前述した通り、HRテクノロジー事業からは2020/2Q時点で撤退しているので、3Q以降の業績はありません。また、暗号資産関連事業はITサービス事業と金融サービス事業に集約されました。いずれも単体の業績で、単位は(千円)です。

売上高 ITサービス 暗号資産 金融 HR
2020/1Q 1,163,457 -23,726 122,470 405,219
2020/2Q 1,170,738 12,493 -148,817 437,170
2020/3Q 1,134,556 0 146,613 無し
2020/4Q 1,227,880 320,078 35,190 無し
2021/1Q 1,205,225 無し 66,303 無し

ITサービス事業の売上高はわずかに上昇傾向ですが、2021/1Qで暗号資産関連事業の一部を取り込んでも減少している点には注意が必要です。金融サービス事業は4Q単体から見れば約1.8倍増加しています。しかし、2020/1Qから見ると半分で、さらに2020/2Qは売上高なのに赤字という異常自体になっています。

営業利益 ITサービス 暗号資産 金融 HR
2020/1Q 40,062 -153,475 -23,380 -40,258
2020/2Q 27,989 -20,260 -298,348 22,119
2020/3Q 38,374 0 -1,473 無し
2020/4Q 71,374 48,008 -103,355 無し
2021/1Q 66,730 無し -81,553 無し

ITサービス事業は他事業と比べて安定して利益を出せていますが、金融サービス事業はなかなか赤字が縮小しません。暗号資産関連事業はITサービス事業と金融サービス事業に取り込まれたことにより、決算短信にはそれを考慮した前年同期比の情報も公開されています。

- 売上高 営業利益
- IT 金融 IT 金融
2020/1Q 1,186,471 94,775 -85,264 -51,076
2021/1Q 1,205,225 66,303 66,730 -81,553

ITサービス事業は黒字化した一方で、金融サービス事業は赤字が拡大していることがわかります。それでは各事業の詳細について見ていきましょう。

ITサービス事業の状況

ITサービス事業は以下のような事業を行っています。

ITサービス事業の既存開発案件は順調ということです。しかし、暗号資産関連事業から引き継いだ案件は「Zaif Exchange」の開発が活発な一方で、暗号資産向けパッケージ「crypto base C」は2020/2Qから受注のない状況になっています。

金融商品取引事業の状況

eワラント証券が柱となる事業です。株価高騰のきっかけとなった話題の新商品「ビットコインレバレッジトラッカー」 はこの事業の1商品です。

決算短信の説明を見ると、その決算に計上されない新商品の紹介が長々と記載されていて、その決算期間内で実際に利益を出せている商品が何かという説明は見受けられません。利益に繋がりそうな文面は「口座数は着実に増加している」くらいでしょうか。主観混じりの話なので、気になる方は自分で確認してみてください。

ビットコインレバレッジトラッカー」も2021/1Qの決算短信の説明に記載されています。この商品も2/25からの取扱なので、2021/1Q決算の売上/営業利益には計上されません。

4.財務諸表に関する分析

負債および純資産の推移

それでは、現在の資産の面からCAICAを分析してみましょう。これは表よりグラフで見た方が分かりやすいと思います。

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前記事の通り、2020/4Qでライツ・オファリングにより資金を調達したことで、自己資本比率が80%以上となって大幅に財務が改善しました。財務改善自体は良いことですが、発行済株式総数が増加したことで1株単位の価値が大幅に低下したことには注意が必要です。今回の場合は約2分の1になりました。

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発行済株式総数は上記グラフの通り、右肩上がりです。2013年は単元株式数切り上げのための株式分割のため、問題ありませんが、以降は株式分割を行っていないので、右肩下がりで株式の価値が下がっていると言えるでしょう。

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一方で、上記のグラフの通り、純資産額の推移は好調とは言えません。なお、純資産総額がマイナスになっている2014年は不適切な会計を修正した結果*3のようです。流石に今は適切に会計していると思うので深追いはしません。

ライツ・オファリングで調達した資金の使途

現状がどうあれ調達した資金が適切に使われて、企業として成長できるのであれば問題ないと考えることもできるでしょう。なので、前回分析を省略した資金の使途についても今回はチェックしました。2020/9/30時点のIRニュース*4によると、用途は以下のように記載されています。なお同じ項目があるのは時期ずれで使われる予定になっているためです。

各用途に対する金額から割合を計算したグラフが以下になります。社債返済と運転資金の割合が61.1(%)も占めていることがわかります。企業成長に繋がる資金(M&A資金のみ)の割合はわずか38.9(%)です。

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2021/1Qの決算で公開された有価証券報告書はこの使途が更新されていましたのでご覧ください。ちなみに、以下の使途が追加されました。

  • ⑨株式会社フィスコデジタルアセットグループの発行する無担保普通社債の引受
  • ⑩暗号資産ファンドへの出資
  • ⑪アートファンドへの出資
  • Zaif HD株式の取得
  • Zaif HD増資引受

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上記のグラフを見るとM&A資金の大半は「Zaif HD」の子会社化に使われたことが分かります。つまり、今後の成長は「Zaif HD」の業績に大きく影響されるということです。これを良しとみるかどうかは投資家次第だと思います。

また、ここで思い出してほしいことがあります。ITサービス事業(旧暗号資産関連事業)の売上は「Zaif HD」の開発です。「Zaif HD」を子会社化することで、次回からITサービス事業の売上の一部が連結決算で相殺される*5ことは覚えておく必要があります。

5.現在株価の推移考察

株価指標からの考察

「株価さえ上がれば業績などどうでもいい」「通期業績は黒字見込みだから1Qはどうあれ株価は上がるはず」きっとこういう風に考えている人も居ることでしょう。では、株価の面からCAICAを分析してみましょう。

現在株価は59円と「割安」に見えるかもしれません。しかし、株価は時価総額に対する利益(PER)や資産(PBR)で評価するのが一般的です。この観点で行くと、PER256倍/PBR4.13倍と決して割安ではありません。これがどれだけヤバいのか。昭和バブルおよびITバブルの日経平均と比べてみましょう。

- PER PBR
CAICA(3/12時点) 256倍 4.13倍
昭和バブル*6 61倍 5.6倍
ITバブル*7 305倍 2.72倍

PER観点では昭和バブル時を大きく超過し、ITバブル時に迫る水準になっています。PBRについても昭和バブルに並ぶ水準まで高騰してしまっています。なお、3/12時点の日経平均のPERおよびPBRは、それぞれPER22.79倍/PBR1.33倍です。

前記事にも書いた通り、上昇前の株価16円でも予想PERが69倍と、成長株ではありがちな水準ではあります。ただし、これは昭和バブルと同じ水準でもあります。2021年通期業績の会社予想基準でこの評価なので、2021年通期業績が未達もしくは赤字のままだったとしたら悲惨なことになります。

通期まで行かなくても2Qの業績がよほど好調でないと株価の維持は厳しいでしょう。1Qは1.76億の赤字だったので、残りの2Q~4Qで3.23億稼がなければいけません。2Qは最低でも1.07億の純利益が必要です。

信用取引残の状況

CAICAの信用取引残は買い残が非常に多く、3600万株もあります。M&A資金の使途も大半が確定したので、これ以上大きなIRニュースが出て再度の高騰が発生することは考えにくいです。週明け直後はどうあれ、株価は買い残を消化しながら徐々に下落していくことでしょう。そもそも日本初とはいえ金融商品の1つでしかない新商品の発表だけで株価が数倍になること自体おかしいんですけどね。

ちなみに、売り残の方は2/5から順調に縮小しています。2/5時点では5倍だった信用倍率は、3/5時点で11.31倍になっています。信用取引(制度信用)の期限は6か月なので全ての人が買い残を決済するわけではありません。しかし、保持し続けることで金利の支払いが増加することを考えれば、一旦手仕舞いして2Q決算前に再度仕込もうと考える人も出てくることでしょう。下がって行く株価を見て損切りする人も出てきます。そして、最後に長期投資と思っていた人の狼狽売りが出てくると思います。

出来高からの分析

多いのは信用買い残だけではありません。そもそも、20円以下でホールドしている人が多いのです。以下の株価チャートを見てください。

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出来高が10月から増加していて、12月はさらにその速度が加速していることが分かるでしょうか。現在株価は60円近辺ですから、2月以前にホールドした人はいまだ3倍の含み益があるのです。つまり、現在株価から下落したとしても「いつでも利益確定できる人はたくさんいる」ということです。

株式併合の影響

CAICAは5/1に10株を1株にする株式併合を行います。これにより、1株当たりの資産価値は10倍になり、保有株数自体は10分の1になります。これにより株価はどう推移するのでしょうか。CAICAホルダーが話題に上げやすいオンキヨーも昨年7/17に5株を1株にする株式併合を行っています。株価チャートを見てみましょう。

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見ての通り株価は5倍にならず、一時的に40円から65円まで上昇した程度で後は下落基調になっています。取得単価(理論株価)*8は株式併合により数倍になりますが、実際に売買出来る株価と一致しないことがわかります。

これを念頭において株価のトレードサンプルを考えて見ましょう。仮に株式併合前に平均取得単価50円で1000株取得して現在まで保有していた場合、その後の最高値(7/28)と現時点(3/12)に売却した時の評価損益は以下の通りになります。

- 購入(7/17) 売却(7/28) 売却(3/12)
株価 50 65 15
株数 1,000 200 200
評価額 50,000 13,000 3,000
評価損益 - -37,000 -47,000
損益率 - -74.0% -94.0%

実際の保有銘柄で株式併合を経験したことは無いので、もしかしたら間違いがあるかもしれません。ご了承ください。

6.その他のニュースについて

インベスコの株式購入について

「Invesco Capital Management LLCがCAICAの保有割合を増やした」というニュース*9があるのだから、今後の成長にも期待が出来るのでないかと考える人も居ることでしょう。確かにブロックチェーン技術は将来有望な技術であり、CAICAの事業は成長が見込めると考えることは出来ます。

しかし、CAICAの業績が花開くのは数年後かもしれませんし、数十年後かもしれません。資産運用会社がたかが数日の株価変動だけを考慮して売買しないことは考えておきましょう。配当が無くても数年株価が上昇せずそれどころか大きく下落したとしても、我慢して保有していられますか?

そもそも、インベスコは株価が急騰する2/1より前からそれなりにCAICA株式を保有しています。

義務発生日 保有株数 保有割合
2021/01/29 36,776,405 5.79%
2021/02/15 43,232,916 6.81%
2021/02/26 52,209,216 8.22%

急騰後に取得した株数は15,432,811株で、これは急騰前の半分に相当します。つまり、現時点の株価でも充分利益が出ている状態と言えるでしょう。

ネクスの株式譲渡について

1Q決算と一緒にネクスの株式を全て譲渡して特別利益に計上するというIRも掲載されました。これは利益が発生する一方で、今後のITサービス事業の売上や利益が減少するということでもあります。事業の選択と集中という観点では良いニュースと言えます。

ただし、この特別利益は一時金に過ぎないので、これにより配当が発生するということはまずありえません。そもそも、配当する余力があるのなら、ライツ・オファリングで資金を調達するわけがありません。

7.私の結論

現在はどうみても仕手株化しているので、投資先としての検討をする以前の状況です。保有しているのなら早めに利益確定or損切して、保有してなければ近寄らないべきです。

有望な投資先だという確信があれば、黒字になるはずの2Qの決算を見た上で、「落ち着いてから」地道に投資すればよいと思います。

8.おわりに

乗り掛かった舟は最後まで乗ろうと思って、1Q決算の内容と前回分析対象外とした資金の使途について調べてみた結果が本記事になります。調査に4時間、記事執筆に4時間となかなかの作業時間になってしまいました。定位株は急騰すると大きいかもしれませんが、投資とは言えないギャンブルだと思っています。

他人の資金の使い方にとやかくいう権利はありませんが、大事な資金を使うのですから投資先と投資金額はよく考えましょう。また、今後CAICAの株価が下落したとして、このギャンブルから一転して長期保有を目指すのは無理筋なので、ゆめゆめお忘れなきよう。