1.はじめに
今回は仮想通貨事業で話題になっているCAICA(2315)について分析してみようと思います。ただし、仮想通貨の将来性については語らず、過去の業績と現在の財務について語ります。
2.業績チェック
まずは来期の会社業績予想を含めた、通期の決算から見ていきましょう。単位は全て(百万円)です。
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
2017年 | 5,300 | 296 | 661 |
2018年 | 7,640 | △395 | 550 |
2019年 | 7,600 | △615 | △1,753 |
2020年 | 6,003 | △679 | △557 |
2021年(予) | 6,536 | 311 | 147 |
営業利益は3年連続「赤字」です。さらに2019年と2020年は本業以外で赤字がさらに拡大しています。ちなみに、四半期ごとの決算も確認したところ、赤字縮小こそしてきているものの、1度も黒字の四半期はありません。一方で、2021年の業績予想は黒字転換する見込みとなっています。
CAICAは仮想通貨事業が期待されているので、セグメントごとの売上高と営業利益も見てみましょう。
決算期 | 情報サービス | 暗号資産関連 | 金融商品取引 | |||
売上 | 利益 | 売上 | 利益 | 売上 | 利益 | |
2018 | 7,711 | 238 | △80 | △671 | 432 | 19 |
2019 | 7,267 | 81 | 12 | △310 | 457 | 266 |
2020 | 4,852 | 177 | 310 | △125 | 155 | △426 |
利益の柱が情報サービス事業であり、売上高も営業利益も減少傾向にあることがわかります。そして、暗号資産関連事業は赤字縮小しているとはいえ、そもそも規模が小さいです。
各事業の売上が全体のどれくらいに相当するのか。これはグラフを見た方が分かりやすいと思います。
ちなみに、2018年の暗号資産関連事業の売上高が赤字になっていますが、これは「仮想通貨の運用が赤字になったので売上高に計上したから」だそうです。
3.財務チェック
次に現在の財務について見てみましょう。まずは純資産の部から。ここからの単位は(千円)です。
- | 2019年 | 2020年 |
資本金 | 1,000,000 | 3,193,697 |
資本剰余金 | 7,663,090 | 9,856,787 |
利益剰余金 | △3,247,629 | △3,805,449 |
自己株式 | △88,945 | △88,946 |
株主資本合計 | 5,326,515 | 9,156,089 |
利益剰余金が赤字になっています。つまり、これまで事業をしてきた結果、現時点では全く利益が出ていないことを意味します。
また、資本金と資本剰余金が大幅に増加していますが、これはライツオファリングで増資をしているためです。増資した資金の用途はIRニュースに順次掲載されていますが、そこまでは確認していません。増資した資金の用途も仮想通貨の将来性に依存するところがあるので、ここでは是非を問いません。
次に負債の部を確認してみましょう。
- | 2019年 | 2020年 |
流動負債 | 1,867,052 | 1,128,059 |
固定負債 | 2,583,752 | 929,930 |
純資産 | 6,044,184 | 9,239,217 |
負債純資産合計 | 10,494,997 | 11,297,215 |
自己資本比率 | 57.59% | 81.78% |
随分と負債金額が減少して増資により純資産が増加しているため、自己資本比率は80%超えになっています。負債の観点に関しては優良企業に該当するでしょう。
最後に資産の部について見てみましょう。
- | 2019年 | 2020年 |
流動資産 | 4,265,389 | 6,139,553 |
固定資産 | 6,229,607 | 5,157,661 |
(投資有価証券 分) | 4,178,338 | 4,845,179 |
資産合計 | 10,494,997 | 11,297,215 |
増資により資金が増えたので流動資産がかなり増加しています。加えて注目すべきなのが資産に対する投資有価証券の割合です。実に42.89(%)もあります。純資産の部と同様に、この用途についてのコメントは差し控えます。
4.私の結論
率直に言うと近年利益が出ていない時点で、私は投資対象外の銘柄と判断しています。2020年はコロナウイルスの影響で業績が大幅に悪化した業種は多くありますが、その中でも情報サービス事業や投資に関する事業はどちらかというと利益を出せる側の事業と言えます。また、2020年の四半期いずれも営業赤字なので、来期の業績予想が黒字になるかどうかも怪しいと思っています。
また、IRニュースの新商品「ビットコインレバレッジトラッカー」の 発表により、株価は上昇してきています。現在株価は59円であり、これに伴って予想PERも256倍になりました。上昇前の株価は16円でこの時点ですら予想PERが69倍と、成長株ではありがちな水準ではありますが割高気味です。来期の業績基準でこの評価なので、来期が業績未達もしくは赤字のままだったとしたら悲惨なことになります。
そもそも現在はどうみても仕手株化しているので、投資先の検討をする以前の状況です。信用取引残を見ると、買い残3222万/売り残343万と他企業の30~100倍程の厚みになっています。1月時点から既に厚みがあり、2/12をピークに買い残売り残ともに減少してきています。
信用取引残が通常の規模に戻って出来高が落ち着いて来ると、長く株価低迷していくことは容易に想像できます。有望な投資先だという確信があれば、「落ち着いてから」地道に投資すればよいと思います。きっと、1Q決算の業績を見てからでも遅くはないでしょう。
5.おわりに
この記事は本銘柄に対する個人の株の売買を制限する物ではありません。そもそも、そんな権限はありません。本記事を見て投資を控えて機会損失しても、はたまた本記事を読んだ上で投資をして損をしても、一切責任は取りません。自己責任でお願いします。
ただ、本記事を読んで、いまCAICAで盛り上がってる方々に少しでも「自分で分析してみよう」と思ってもらえたら幸いです。
個別株はインデックス投資と比べてリターンもリスクも大きいです。小型株は大型株と比べて値動きが激しいので、リターンもリスクもさらに大きくなります。リスクを減らしてリターンを増やすためにも、株式指標に関する知識はもちろんのこと財務・会計・経営の知識なども学んで活かすことが大事だと思います。